私たちが稲作を始めてからずっと追求してきた農法。
それは「生物多様性」による自然の営みと一体化した農法です。
私たち増田家の先祖は、大昔、
荒野であったこの明石市の西側の土地を開拓した一族であったと伝えられています。
何もないところですから、まずは耕作する田んぼや畑という圃場を作るにあたって、
日照や水のことを考えて圃場を、また圃場ありきで住処を構えたに違いありません。
大昔ですから、農薬も肥料もポンと買えるものなんて無い時代です。
自然と一体化しつつ、労働力も無いので皆で協力し、力を合わせて必死で日々を生きてきたのだのだと思います。
それは、数多の生き物との共存の道です。
・・今はそのご先祖の開拓した道は受け継がれたものも残っていはいますが、死に物狂いで形成していってくれたであろう圃場や自然環境は見る影も無く、
そのほとんどは、大きな工場や公園や人間が住む住宅や店舗へと形を変えてしまっています。
それはとても残念なことではありますが、少なくとも私たちの中には、そのご先祖の魂は「心」だけは絶えず受け継がれ続けています。
だから「血」が騒ぐのでしょうね。
理屈ではありませんね。
コウノトリさん
先日、山陰地方への旅に、私の生徒さんたちの企画で参加させてもらいました。
絶滅から見事に復活を遂げつつあるコウノトリの郷へ。
この生徒さんたちは、全くの異業種からの参入で、全くの一からの指導でしたが、
本当に立派に立派に成長され、一人前になられ、
今や地域の担い手として大きな存在になりつつある凄い方々です。
そんな彼らのお言葉に甘えて、今回はゆっくりと旅をさせて頂いたわけですが、
コウノトリさんの生きる環境を眺めていると、その昔、私たち増田家の祖先が開拓した風景が目に浮かびました。
数多の生き物たちが命の炎を燃やしてその波が春となり夏となり、大きな季節のうねりとなって押し寄せてきていたのでしょう。今の人間の経済の波を大きくしのぐ勢いで。
私はこの生き物たちの波を感じるのが本当に好きです。
「生きている」っていう感じになる瞬間です。
特に水辺の生き物たちが元気いっぱいになる初夏が大好きです。
コウノトリさん。。
大空を自由に舞う姿はなんとも言えない素晴らしいものでした。
上空から私たち人間を眺めて何を思うのでしょう…
話はそれますが、日本の淡水魚の絶滅危惧種のタナゴさん。
私は個人的にこのタナゴが大好きで、近年田んぼ仕事の合間に研究をしてきたわけですが、
彼らが卵を産むのに必ずいなくてはならない淡水ニ枚貝さん。
彼らがハゼ科のヨシノボリさんや餌取り王のオイカワさんの「エラ」にまず最初に寄生して少し大きくなってから川底に至るのはあまり知られていません。
ある種の生物が生きていくのに、一見まったく関係の無いようにみえる生物が存在していなければならないっていうことって普通にあるってことです。
だから、コウノトリさんの復活によって育まれる生物や世界も必ず存在するって事です。
少なくとも私は、コウノトリさんに沢山のご縁を運んでもらっています。
自分がこの世に存在しているということは、
宇宙創生から絶えることない命の輪がここに存在しているという証です。
ご先祖の思い・心、魂が突き動かすものがあるから
鮮明に見えている世界がありますから
誰がなんと言おうとも、私たちは私たちの信念を持って、これからも生きていきたいと思います。
ありがとう
コウノトリさん
農園主